1 はじまりは突然に

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「えっ、はい?」 「あのーお仕事中いきなりすいません。スマホの充電ケーブル持っていませんか?」 (この聞き覚えのある声は、どこ関係の人だっけ?いや、向こうは私のこと知らなさそうだから、なんかのセミナーとかカンファレンス関連で見たことある人か……) 「充電ケーブル??ありますけど、どの種類のでしょうか?」 「ええっと、USBタイプCがあれば」 私はかばんに入れておいたケーブルを取り出す。ケーブルにはモバイルバッテリまでついている。 「あのーそのモバイルバッテリーも一緒に借りてもいいですか?あと、microUSBのケーブルもありますか?」 (何なんこの人??) と思いつつ、microUSBのケーブルをモバイルバッテリー付きでさしだす。 「あのーーLightningケーブルもありますかね?」 私はさっと机にはおいてあったスマホからケーブルとモバイルバッテリーをはずして彼に差し出す。 「充電終わってるから使ってもいいよ」 「えええええええーー全部持ってるって!すごい!全部借りても大丈夫ですか?今から動画撮影するので1時間半から2時間くらいかかちゃうんですけど。大丈夫ですか」 「大丈夫だけど、動画撮影って?」 と怪訝そうに聞く私に、ああそうだと言いつつ、がさごそと名刺を差し出してきた。 〈 イラストレータ 片山 要 〉 (やっと思い出した。Youtuberでイラストレータの人だー。) 「あっあのぉ、動画ってイラスト書く動画とかソフトの使い方動画とかのですよね?」 「はい、そうですそうです、ええーっとあそこのミーティングルームで撮影していますので」 と言い残すと彼は3つのケーブルとモバイルバッテリーを手にミーティングルームに入っていってしまった。
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