君に会いたくなったら

１ はじまりは突然に

（3つもケーブル持っていて、どうするんだろう？？）
と不思議に思い、ミーティングルームを見つめていると、スマホ3台を3脚に設置して撮影の準備をしている様子が見える。

（あーいけない。さっさと私も作業しないと）

作業用のノイズキャンセリングヘッドホンをつけて作業に集中する。今日中に半分以上進めておかないと、徹夜作業になってしまう。

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トントンと肩をたたかれる。
ビクっとして振り返ると、彼が3つのケーブルとモバイルバッテリを手に立っていた。

「これ､ありがとうございます。ほんとに助かりました。ミーティングルーム金曜日と土曜日の夜の10時から2時間だけ撮影許可もらってるんですけど、機材の中に入れてたはずのケーブルはないし、スマホのバッテリーもきれそうになってるしで、はーもう助かりました」

とにっこり笑う彼に、
（あー動画で見るよりもずっとかっこいいー本物だー）
なんて思いつつ見とれていると

「あのーお名前を……」
と言われて、私は自分が名乗りのしていないことに気が付き、カバンの中からゴソゴソと名刺入れを取り出し、

「桐島明日香と申します」
と言って手渡す。