第2話 長い商店街

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「ああ、そうなんだ……」鬼崎はそっけなく笑った。  すると優紀は右手を口に当てクスクスと笑った。小さく肩を震わせながら笑う仕草は、まるで雪国の黒兎のように愛らしかった。 「ごめんなさい、お客さん。私、お客さんにそっくりな話し方をする人を知っていて……。私の幼馴染なんですけどね、いつもオドオド、ソワソワしてる子だったの」  鬼崎の背中は汗でびっしょりだった。 「ふふふふふ、本当にごめんなさい。なんだか私、とっても失礼なこと云ってるわね。ごめんなさい。忘れてください」 「ああ……別に気にしなくていいですよ。僕自身、その……なんというか、いつも自分がオドオドしているっていう自覚をもってるし……」  刹那、優紀の表情が一瞬硬直した。彼女は改めて鬼崎の表情をまざまざと観察した。 「あの……もし間違っていたら、ごめんなさい。お客さん、ご出身は秋田ですか?」  ついにきた! 鬼崎の心臓が飛び出しそうになる。 「……はあ、まあ……」 「男鹿(おが)のひと……?」 「……ええ……」  優紀は右手を口に当てたまま硬直している。猫のような瞳を大きく見開き、鬼崎の容貌に釘付けになっている。やがてふり絞るように「嘘でしょ……」と呟いた。
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