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明るい公園でさわやかな風を全身に受け、俺は心の澱みを振り払おうとした。しかし、走れば走るほど俺は恐ろしくなっていった。走ることに集中していると俺の心は研ぎ澄まされていく。そうすると逆に俺を見つめる3つの生首のイメージがどんどん増幅していく。
彼らは俺を嘲笑い、やがて声をそろえてこう囁くのだ――『わが三つ首の滝へと参られよ』。俺は完全に袋小路に迷い込んだ。
一昨日も昨日も、とにかく俺は必死だった。しかし、どうあがいても「三つ首の滝」という呪わしきキーワードを消し去ることはできなかった。
もちろん、今日の目覚めも最悪だ。俺は深いため息をついた。
そうやってベッドからでたあとも俺はソファのうえで朦朧としていた。毎日見る生首の悪夢の残像――その虚ろな表情がいまも瞼に焼きついている。
そして消えてなくならない呪わしき言葉、そしてそれに必死に抗う俺の努力のすべて――俺はただぼんやりとそういったことを考えていた。
どんよりと曇った暗い空と俺の心が共鳴する。俺は気分を切り替えるべく、洗面台へと向かった。ほぼ無意識に歯磨きをして顔を洗う。冷たい水を顔にかけ、眠りの時間が終了したことを宣言した。
そう、また新しい俺の1日が始まるのだ。長い長い焦燥の時間が。
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