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プロローグ
「姉ちゃん、見て見て」
俺は姉の関心をひきたくて自分が発見した黄昏月を指さした。天空に映える青白い月は、その色彩のうえに黄昏色を反射し、壊れた万華鏡のように幽玄な輝きを宿していた。それは逢魔時の空に君臨する魔法の鏡のようだった。それは俺たちの町を希望色に染めあげ、一家を団欒のひとときへと誘う慰労のサインでもあった。
幼きころの俺は姉のことが大好きだった。美しく研ぎ澄まされた鋭利な智慧の持主――彼女は俺のヒロインであり、永遠の憧れだった。
「……きれいな月ね。お母さんにも見せてあげたいね」
姉は相好を崩し、そう呟いた。
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