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小学校も高学年になると、優紀が鬼崎にまとわりつくこともなくなった。優紀は、勉強はあまりできなかったが、活発でクラスの人気者だった。一方、鬼崎は元来の人見知りを克服できず、クラスのなかでも目立たないパッとしない子供だった。
クラスの中心になって、男女分け隔てなく楽しそうに会話する優紀は、どこかしら大人びていた。容姿の整った優紀は、当然のごとく男子にもてた。鬼崎は、そんな優紀に一定の距離を置きつつ、いつも遠くから羨ましそうに彼女を眺めるのが常だった。
中学校に上がり、しばらくすると優紀の髪形や服装が乱れだした。髪を茶色に染め、学校で定められたスカートではなく、もっと短いスカートを履くようになった。
言葉遣いも荒くなり、噂によると夜な夜な校外の友達たちと遊び惚けているらしい。
鬼崎の成績は中の上、友達は2、3人しかいなかった。派手な優紀と地味な鬼崎。ふたりはもう3年以上、言葉を交わしていなかった。
優紀の外見が典型的なギャルと化していくのをよそに、鬼崎は相変わらず目立たず地味なままだった。幼き頃、鬼崎の手を握りたがった元気な女の子、しかし、優紀はもはや鬼崎のことなど眼中にない様子だった。
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