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金曜日
金曜日。
俺は授業にまるで集中できず、瀬戸に心配されて早々に保健室に行くことになった。
こんな経験は、北雪学園に入ってはじめてのことだった。
保健室のベッドに横になりながらも、俺はまるで眠れなかった。
昨日の夜から、たとえ眠りについても短時間で目が覚めてしまうのだ。
まるで鎮まってくれない欠陥品の脳みそに対してイライラの感情が募り、結局は興奮の信号だけが俺の脳細胞を駆け巡り続ける。
勘弁してくれ。いい加減休ませてくれ。
そう頭で思っていても、当の頭は俺のことを休ませてくれない。
自分自身の身体への敗北を実感しながらも、頑張って目を瞑っていると、保健室の先生――つまりは養護教諭に話しかけられた。
最悪だ。この人は、俺の出身中学に目をつけている。
この人の生まれ持った善意が、今の俺にとっては悪意になる。
どれだけ聞かれても、俺は曖昧にしか答えられない。
今はそのことを考えたくないから。
一つだけ運が良かったのは、元々の体調不良も相まって、あまりしつこくは追及されなかったこと。
そして一つだけ運が悪かったのは、ベッドで横になってる間に聞きたくもない会話がほんの少し聞こえてしまったこと。
色々な情報を括弧に入れた、会話と言うにはとても曖昧なものだったけれど、背景を知ってしまっている俺にだけはその内容が理解できてしまった。
彼女――七瀬が、金曜日までずっと学園に来なかったということを、俺は知った。
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