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美女と野獣のパロ
お題:ジェルド(野獣)、ミッチャン(美女)
美女と野獣
とても栄えたとある国にジェルドという男がいました。
男は国の諜報員として働いており、今回は南にある古城を調査することになりました。
調査中に男はそのお城で変態忍者に捕らわれ、変な薬を注射されました。
「ぐ、ぐあああああああああああああああ!!!!」
その薬によって、男はみるみるうちに醜い野獣となってしまいました。
男の同僚である女は、国からの要請でなかなか戻ってこない男の捜索と古城の調査の任を受けました。
「強い敵いるかな」
女はわくわくしながら出かけます。
古城に行くと一匹の醜い野獣がいました。
女の瞳が輝き、一気に攻撃をしかけます。
ジェルドはひと目見て、同僚のミッチャンだと分かりましたが、説明しようにも獣の声しか出ません。
とにかく殺られないように必死に戦うだけです。
「どうした野獣。攻撃してこないのか」
笑みを浮かべたミッチャンは恍惚としていて、野獣がジェルドだと気がつきもしませんでした。
ジェルドは自分が無害であることを知らせようと考えます。
戦いながら後退していくと、古城の裏手にある庭に出ました。
そこには一面に真っ赤な薔薇が咲いていました。
ジェルドは攻撃をかわし、一輪の薔薇を摘むと、その薔薇をミッチャンに向けて差し出しました。
振り下ろしたミッチャンの剣は薔薇すれすれでピタリと止まりました。
「……わたしにくれるのか?」
ジェルドは必死に頷きます。
「降参というわけだな。よし、今日からお前は私の僕だ。いいな?」
時間をかければ分かってくれると思ったジェルドは、また必死に頷きました。
「ははは、人間の言葉がわかるのか。面白いヤツだな」
ジェルドは初めてミッチャンの笑顔を見ました。
その笑顔はとても可愛く、一瞬だけ時が止まったように感じました。
ミッチャンは古城の調査を行うため、しばらく野獣と一緒に古城で暮らしました。
その日々はとても楽しいものでした。
しかし、楽しい日々もつかの間。
あの変態忍者が戻ってきたのです。
「私のファム・ファタールに手を出さないで欲しいですね」
突然攻撃をしてきた変態忍者にミッチャンも攻撃を仕掛けました。
激しい攻防が繰り広げられます。
しかし忍術を使う相手との戦いには慣れていないミッチャンはピンチに陥りました。
変態忍者が振り下ろした剣がミッチャン目掛けて振り下ろされます。
そこへジェルドが間に入り、変態忍者の剣を体で受け止めました。
「私のファム・ファタール!!」
「ポチ!!」
目の前で崩れ落ちる僕の野獣。
「貴様ーーーー!!!!」
ミッチャンは、怒りで変態忍者をやっつけました。
「ポチ……お前……」
ジェルドの体から沢山の血が流れています。
「辛いだろ……今、楽にしてやる」
ミッチャンはジェルドに跨がり、剣を首に当てました。
しかし、なかなか首を切ることが出来ません。
「ポチ……」
ポトリとミッチャンの瞳から涙が溢れ落ちました。
その涙がジェルドの顔に落ちると、ジェルドの体が光輝きます。
驚いたミッチャンは、素早く後ろへ飛び退き様子を伺いました。
光が弱まると、そこには野獣ではなくジェルドが眠っていました。
「ジェルド……?」
ミッチャンが声を溢すと、ジェルドが目を覚ましました。
「よぉ、ミッチャン……。サンキュウ。なんか呪いが解けたみてーだ……」
「……ポチはジェルドだったのか……」
ジェルドはことの成り行きを説明しました。
ずっと黙って聞いていたミッチャンは、すっと立ち上がりジェルドを見下ろします。
「……がっかりだな」
「え、えぇっ!!? なんでだよぉ!」
「野獣の方が男前だった」
「んなばかな!」
ジェルドが憤慨すると、ミッチャンは右手を差し出しました。
「ん、行くぞ、ポチ」
ポチと言われたジェルドは不満の声を漏らそうとしましたが、思い留まりました。
何故ならミッチャンに笑みが浮かんでいたからでした。
「おう……」
なんだかんだで二人は仲良く古城の調査をしましたとさ。
おしまい。
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