1人が本棚に入れています
本棚に追加
第2話 ギルド
昼食後、店を出た二人は、当初の目的通り『ギルド』に向かった。
ギルド――言うなれば職業斡旋所。アキラにとっては『ハローワーク』の方が聞き慣れている。
職業、長期短期仕事、アルバイトなどの紹介をしている場所だ。
ただ、この世界には魔道士や剣士、裏の職業でいえばシーフ(盗賊)やアサシン(暗殺者)等も存在しているため、特殊な案件もある。
仕事自体はどれも公式の組合や協会を経て紹介されているものだから、どんなに物騒な案件でも、請け負ったからといって罪になることはない。
そして、誰もが好きな案件を請け負えるわけではない。
それ相応の実力ってものが必要になる。
その実力をつけるために、ギルドの案件で場数を踏み、大きな仕事にありつける者もいる。
後、ギルドを訪れると、ジル曰く、各国の情報を入手しやすいという。
というのも、ギルドを訪れる者の大半は余所から来ている。
今のアキラとジルのように。
その場所で交流を持ち、運がよければ貴重な情報を入手することも可能だ。
そして、それにうってつけの人物がアキラの傍に一人いる。
「あの……」
「あ、はい! 僕が知ってるコトであれば、何でもお教えします!」
「い、いえ。ただ、受付の窓口を教えて頂きたいだけで……」
さすがジル。その見た目だけで、あっさり男剣士のハートを掴んだようだ。
「お一人ですか? もしよろしければ、僕とパートナー組みませんか? いい案件なんですが、二人一組が条件でして……」
なかなか押しの強い男だ。
ジルの話に全く耳を傾けない。
そして、どうやらアキラのコトは全く視界に入っていないようだ。
「どうみても連れだろあたしは」とアキラは内心思いながらも、ことの成り行きを見守る。
「い、いえ、私は……」
その男の押しの強さにたじろぐジルは、目でアキラに助けを求める。
面白そうなのでもう少し見物しようと思っていたが、あんまり無視を決め込むと、後でジルにどんな仕返しをされるかわからない。
アキラがその男を制しようと間に入ろうとした時、
「あら。だったらお兄さん、アタシと組まない?」
そう言って、いきなり現れたのは、長身で細面なイケメン旅芸人だった。
最初のコメントを投稿しよう!