第2話 ギルド

2/3
前へ
/5ページ
次へ
「アタシ『メリー』って言うの。お兄さんお名前は?」 「あ、いやその……」  ジルに迫っていた男は、今度は逆にメリーと名乗る旅芸人の男に迫られていた。  その隙に、ジルはその男から離れアキラの横に並んだ。 「お、俺が探していたのは女性のパートナーで……」 「それならピッタリじゃない。アタシ女性パートもOKよ!」  そう言ってOKポーズとウィンクを送るメリーにますますたじろぐその男は、 「あっ、あー! お、俺、きゅ、急用があったんだ。なので、し、失礼しますっ!」  そう言い残し猛ダッシュでギルドを出て行った。 「何よもう、つれないわねぇ……ん?」  不満げな呟きを漏らした後、メリーはアキラとジルに目を向ける。 「ひょっとしてアナタ達、ここ初めて?」  メリーの問いかけにアキラは「あたしは初めてですけど……」と答えた後、ジルに目をやる。 「私は何度か来させて頂いてます」 「うん。そんな感じね。そっちの子と違って、アナタ貫禄あるもの」 「か、貫禄――」 「……プッ」 「ちょ、ちょっとアキラ。何笑ってるの?」  メリーの言葉に噴き出すアキラは「ゴメンゴメン」と言いながらも笑いをこらえきれないでいる。そんなアキラに「アラ? でもそっちの子――」と近付いて来て、 「なっ!? ちょっ――」  メリーはアキラの頬に手を添えじっとその目を見つめる。 「ア、アキラっ!?」  ジルがそんな二人の様子に戸惑いの声を上げると、 「やあね。そんな大声出さなくても、取って喰ったりしないわよ」  そう言った後、メリーはあっさりアキラから離れた。 「……な、何なんですかっ! いきなり」  されたコトに抗議の声を上げるアキラに、メリーは「まあまあ」と落ち着いた様子で彼女を宥める。 「ちょっと気になったのよね。アキラって言ったっけ? アナタ――"ココ"の住人じゃないでしょ」 「えっ?」 「わ、私もアキラも、この土地の者じゃありません。私たちは――」 「あ、そういう意味じゃないの。何て言うのかしら。アナタ、"過去"のにおいがするのよね」 「へっ? 過去……?」  メリーの言葉の意味を理解できずにいるアキラはジルに目をやるが、首を横に振られる。 「あの……それ、どういう意味ですか?」  アキラの問いにメリーは、 「んーそうね。……ふふ、ゴメンナサイ。アタシも上手く説明できないわね。ま、美人旅芸人の戯れ言だと思って気にしないで頂戴。じゃあね」  メリーは二人に手を振り、ギルドの入口から左奥にある受付窓口へ颯爽と歩いて行った。 「……何だったんだろ? あの人」 「さあ。でも見て。あの人が受付している窓口――あそこで仕事を請けられるってコトは、かなりの上級者だよ」  ジルの言葉に「そうなの?」とアキラは聞き返す。 「うん。あ、そっか。アキラはギルドに来るの初めてだもんね」 「そりゃそうでしょ」 「ふふ、ゴメンゴメン。とりあえず初心者向けの受付窓口を……ってあった! ちゃんと看板出てたんだ」 「尋ねなくてもよかったわね」とバツ悪そうに舌を出し、ジルはアキラに目をやる。 「ま、いいんじゃない。それじゃ受付済ましちゃ――」 「ちょーっと待って! そこのお二人さん」  いきなり大声で呼び止められたアキラとジル。驚きながら声のした方へ振り返ると、 「そうアンタたちよ。ほら、いいからこっちへいらっしゃい!」  そう言って手招きするのは、さっきのイケメン旅芸人だった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加