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アキラとジルは「何アレ?」と言わんばかりに互いの顔を見る。
そんな二人に痺れを切らしたのか「もう! じれったいわね」と、ズカズカと彼はこちらに向かってくる。
そして、二人に近づきニッと笑みを見せると、互いに片方の腕をとられ、アキラとジルはさっきまで彼がいた受付窓口へと連れて行かれた。
「はいっ! これで問題ないでしょ?」
彼が窓口のギルド職員に笑顔で尋ねると、
「あ、あのね……。いくらアンタが星四つの称号持ってたって、いきなりこんな子供二人をパーティとして認めろって言われても、それは無理だよ」
「他の仕事にしな」とあきれながら手を振る職員。
「あら? でもこの仕事を請ける条件には『三人一組』ってコトしか記載されてないわよ。だったら問題ないんじゃない?」
尚も食い下がる彼に職員はため息をつきながら「いいかい?」と諭すように言葉を続ける。
「アンタの請け負う仕事は、信頼できるパーティ三人が揃って初めて成り立つんだ。確かにここには『三人一組』以外何も書いてないが、普通は書かなくても仕事内容に目を通した時点でちゃんとしたパーティを連れてくるもんだよ。それを……まあ、そこらで会った子供を連れてきて……大体、その子ら初心者でしょ?」
「いえ。私は星二つです」
「へっ?」
職員のその言葉にジルは軽く手を上げ答え、腰に巻いてるポシェットから『ギルド認証カード』を取り出した。
「星二つって……アンタまだ未成年だよね?」
そのカードを確認しながら目を丸くし驚く職員。
「はい。十六歳です」
「じゅ、十六で星二つって……」
「魔法学校の実習で何度か仕事を請け負い、その時に称号を頂きました」
「!……そ、そうかい。……アンタ、なかなか優秀なんだね」
そう言って、職員は感心する眼差しでジルを見ている。
「てことは、そちらの彼女も……」
今度はアキラに視線をやり職員が尋ねると、
「えーっと、あたしは――」
「そうよ。この子も一緒よ。別に驚くコトないでしょ。一五歳で星五つの炎使いもいるくらいなんだし。ほら、さっさっと手続き済まして頂戴な!」
急かすように職員に向かって手を振る彼に「わ、分かりましたよ。少しお待ち下さい」と告げ、徐(おもむろ)に椅子から立ち上がり、席から離れた後ろの引出しを探っている。
その間、アキラは彼に小声で尋ねる。
「あ、あの、あたしたちひょっとして、この仕事一緒に請ける流れなんですか?」
「ん。そうよ。まっ、心配しなくて大丈夫よ。そんな大した仕事じゃないから。それにこの仕事請け負ってる期間中は旅費全部ギルド持ちだし、悪くない話でしょ?」
「!……そ、それ、本当ですかっ?」
彼のその話にいち早く反応したのはジルだった。
「ホントよ。期間は五日。その間の交通費、食費、宿泊費は全部こちら持ち」
「やりますっ! ね、アキラ、やるでしょ?」
「う、うん……」
ジルの勢いに気圧されアキラはつい頷く。
「ふふ。元気があってよろしい。あ、職員さん来たわよ」
そうこうしてるうちに、職員が持ってきた紙を三枚彼に手渡す。
「ここに書いてる注意事項をようく読んで、署名が済んだら持ってきて下さいな」
「了解!」
彼は渡された紙をアキラとジルにも配り、署名を書くため近くのテーブルを三人で囲んだ。
「……はいっ、了解、と」
最初にサッと羽ペンで署名を終えたのは彼――メリー。
「……んーっと、はい、オーケー」
次に終えたのはジル。そして――
「…………コレ、何て書いてあんの?」
最後に読むコトすらできないアキラがポツリと呟いた。
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