11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「あとになって、水月と一緒に歌うのが楽しかったんだって気づいた。初めてなんだ。誰かと一緒に歌っていて、楽しいと思ったのは」
「そうなの?」
「そうだよ。だからさ、水月はもっと自信を持っていいんだ。俺が保証する」
ファンが喜ぶと思って、必死に練習した片目を積むってみせると、ようやく水月は笑ってくれた。
颯真はホッと肩の力を抜くと、立ち上がった。
「食べ終わったら、出発までもう一度、歌とダンスを確認しようか」
「いいの? ソウ君が付き合う必要はないのに……」
「いいから、いいから。俺も緊張しているんだ。人前に出るのは、久しぶりだからね」
食べ終わった食器を運ぶ颯真の背に、「意外。ソウ君は緊張しないと思ってた」と水月が呟いた。
「俺だって緊張するよ」
肩ごしに振り返りながら、颯真は答える。
水月と初めて立つステージは成功させたいと、そう思ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!