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「光は大丈夫か? さっきより顔色が良くはなってるが……」
「大丈夫ですよ。光はもう」
二人が話しているのに気付いているのかいないのか、水月は颯真たちの先を歩く。
「それならいいが……」
マネージャーは渋々納得すると、颯真から離れて水月とステージでの段取りを話し合う。
子役時代も何度か生放送に出演した経験がある颯真とは違って、水月は初めてであった。
マネージャーは生放送中の水月たちの動きを説明していた。
うんうんと頷く水月を見ている限り、もう大丈夫だろうと微笑を浮かべた。
段取りについて話し終えると、二人揃って控え室に戻る。
控え室の前までやって来たところで、同じ事務所の先輩たちから声を掛けられたのだった。
「颯真、光!」
「輝さん、翼さん」
三嶋輝と翼の双子の先輩は、二人に近づいて来る。
「二人とも、一緒に写真を撮らないか? ファンクラブの会誌に載せる写真なんだけどさ」
同じ顔をしているが、カメラマンを指差しているのが輝、「緊張するよね。大丈夫?」と緊張で真顔になって頷く水月に優しく話しかけているのが翼だった。
同じ双子でも、光と水月の双子より、瓜二つの双子の先輩に、颯真が代表して返事をする。
「俺は構いませんが……。光は?」
「自分も大丈夫です」
マネージャーに視線を向けると、渋々、頷いたので、撮影に承諾したのだった。
カメラマンに指示されて、四人は控え室の扉を背に写真を撮る。
左端に水月、その隣に颯真、輝、翼の順に並ぶ。
輝と翼が肩を組むのに対して、颯真と光は並んで立っているだけであった。
「茂庭さん、もう少し出島さんにくっついて下さい」
「えっ……でも……」
戸惑う水月の肩を引き寄せると、颯真は抱き寄せる。
「ソウ……!」
「こうしないと、写真に映らないから」
水月とこんなに近づいたのは初めてであった。
水月とーーいや、そもそも姉貴以外の女子とこうして触れ合った事は無かった。
颯真の右腕に頬をくっつける水月から、熱が伝わってくる。
緊張しているのだろうかーー俺だけじゃなくて、水月も。
「いいじゃん、いいじゃん! IMの二人も!」
「ありがとうございます。輝さん」
「光。颯真と肩を組める?」
翼の申し出に、水月は躊躇う。
「ソウと? でも……」
「いいよ。手は届く? 中腰になろうか?」
腰を落とそうとする颯真に、「大丈夫。多分、届くから!」と、水月は颯真の背に腕を回す。
けれども、やっぱり手が届かなかったので、颯真は膝を曲げて、体勢を引くくする。
それから写真を数枚撮ると、カメラマンの「オッケーです!」を合図に、二人は身体を話したのだった。
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