幸せの代償

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この世の中は残酷だ。 そんな事は知っている。 でもこの幸せの代償は…あまりにも酷すぎやしないか? *** 病弱な母がボソッと呟いた。 「死ぬ前に孫が…見たい。」と。 俺はもう35歳。彼女も何人かいたが、結婚したいとまで思う女は居なかった。 本当の愛なんてよく分からなかった。 周りも結婚していく奴らばっか。 「孫…か…。」 そんな事をボヤッと考えていたら、変なチラシが勢いよく風に乗って俺の顔を覆った。 「ぶっ!」 そのチラシにはこう書いてある。 〝望みなんでも一つ叶えます〟 えっ?望みを叶える? そんな事あるわけない。詐欺ばかりの世の中だ。 まさか…そんな事… でも知らないうちに足が、その場所へと向かってしまった。 いかにも怪しそうな古い屋敷。誘われるようにトビラを開け、中へと入って行く。目の前には、それはもう怪しそうな人物と水晶玉。吸い込まれるように椅子へと腰を掛けた。 『望みなんでも一つ叶えます。』 怪しそうな白髪の老人が呟く。 「あの、本当に叶えられるんですか?」 『あぁ…その代わり、お前の大切なものを一つだけ奪う。』 「叶える代わりに一つだけ?」 『あぁ…それは大きいものか、小さいものかは分からない。』 幸せの代償というやつか。でも今は母の願いを叶えてあげたい。それだけ。後のことなんてどうでも良かった。 「本当の愛が…欲しいんです。」 『了解した。最後に一つだけ奪いに行くからな。』 そう言って老人は白い煙に包まれ…消えていった。 そして俺は気付いたら、自分の部屋のベッドに横たわっていた。 「老人、水晶玉、白い煙…いかにも怪しいよな。」 いきなり「子供が欲しい」なんて言って赤ちゃんが降ってきても怖いし、「身篭りました。」なんて元カノが来ても怖いし…とりあえず、そんな願いをしてみた。 まぁ信じてもいないが。
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