「見えちゃう」俺とビッチくん。

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生まれた時から、俺はコロコロ感情が変わると周りに言われていた。 最初はどうしてそんなふうに言われるのかわからなかったが、確かに自分でも感情の起伏が激しいとは自覚していた。 悩み始めたのは高校生の時だ。時々、自分の体験していない場所の記憶が、まるで体験したことを思い出すように頭の中で再生されることがあった。 その時は本気で怖いと思ったし、でも両親に相談することもできず。 本格的にやばくなってきたのは、高校二年生の時。恋人ができた。 もちろん、手を繋いだり、その先も……が当然の年齢で、でも、俺はどうしてもそれができなかった。 あの時。初めての彼女といざするぜ、ってなった時だ。 彼女とキスをした瞬間、どっと記憶の波が押し寄せた。 知らない男に馬乗りになられて、揺れる画面。 禿げた中年のおじさんが高級そうなバッグを差し出してくる映像。 俺は思わず、彼女から離れた。心臓はバックバクに跳ねて、頭の中が混乱して。 「ごめん」ってただ必死に謝りながら、学校のカバンをひっ掴んで彼女の家から出た。 二ヶ月くらいした頃、彼女は学校を退学になった。
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