「見えちゃう」俺とビッチくん。

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そもそも接触が苦手な俺にとっては(と言ってもその理由は普通じゃないけど)、肩を組まれたりするのですら苦痛で、文化系ならそれも少ないはずと考えていたから。 俺の足は、迷わず文学サークルの前で止まる。 「あの、ここ入りたいんですけど」 数人が、特に声も上げずに、居心地悪そうにテーブルの後ろの椅子で座っていた。 物静かそうな奴らの集まりだ、というのが初手の感想。 「じゃあ、これに記入をお願いします」 「はい。ハンコとかはいらないですか?」 「はい。要らないですよ」 紙には氏名と入部動機。 書き終えると、「はい。では」と、事務作業的にサークルの予定表を渡された。 「あ、めずらし」 対応してくれていたメガネの人の後ろから、私立でもあまりみないような明るい茶髪がひょっこりのぞいてきた。 色白で、大きな目をしていた。広い二重が中性的で、女子にモテそうな顔立ち。 「なんで入るの?」 「体育会系じゃないならって」 「わかる。ま、サークルえらぶのってもう消去法だよね」 「そうかもですね」 茶髪は文化部らしからぬコミュニケーション能力だった。
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