「見えちゃう」俺とビッチくん。

5/21
前へ
/21ページ
次へ
対応してくれていたメガネの大学生は、いつの間にか彼の後ろに引っ込んでスマホいじりを再開している。 「小説とか、何読んでるの?」 「小説……は、あんまり読まないですね。猫の写真集とか、花の図鑑とかならよく見ます」 「へー。男の子にしては珍しいもの読むね」 「ですよね。あんまり人には言わないんですけど」 おかしい。この茶髪の前では、普段喋れないようなことも、するっと口から出てきてしまう。 「俺、猫飼いたいんだけどさ、やっぱ暖房費とか、病気になったとき、馬鹿にならないじゃん?」 「そうですね」 「だから今は猫カフェ巡りで我慢してるの」 「そっちも可愛い趣味じゃないですか」 「だよね。負けず劣らずだったわ」 「あの……」 「ん?」 「先輩……って呼んでいいんですかね?」 「んまあ、今後はそういうことになるよね」 「じゃあ、先輩、LINEとかってやってますか?」 「ああ、やってるよ。交換する?」 「先輩がよければ」 茶髪は、相手のスペースにズカズカ入るわけでもなければ、ほどよい距離感を保って会話できる相手だった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加