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対応してくれていたメガネの大学生は、いつの間にか彼の後ろに引っ込んでスマホいじりを再開している。
「小説とか、何読んでるの?」
「小説……は、あんまり読まないですね。猫の写真集とか、花の図鑑とかならよく見ます」
「へー。男の子にしては珍しいもの読むね」
「ですよね。あんまり人には言わないんですけど」
おかしい。この茶髪の前では、普段喋れないようなことも、するっと口から出てきてしまう。
「俺、猫飼いたいんだけどさ、やっぱ暖房費とか、病気になったとき、馬鹿にならないじゃん?」
「そうですね」
「だから今は猫カフェ巡りで我慢してるの」
「そっちも可愛い趣味じゃないですか」
「だよね。負けず劣らずだったわ」
「あの……」
「ん?」
「先輩……って呼んでいいんですかね?」
「んまあ、今後はそういうことになるよね」
「じゃあ、先輩、LINEとかってやってますか?」
「ああ、やってるよ。交換する?」
「先輩がよければ」
茶髪は、相手のスペースにズカズカ入るわけでもなければ、ほどよい距離感を保って会話できる相手だった。
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