1. 過ち

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 地下に戻って、私はこっぴどく叱られた。  罰として、夜中にも関わらず、みっちりトレーニングや有酸素運動をさせられた。その日あったことを事細かに問い詰められた私は必然的に「恐怖」の感情を吐露することになり、つまりは明日からその感情を抑え込む訓練をみっちりさせられるのだ。例えば拳銃を乱発する人に追いかけられたり、腕のいい銃使いに拳銃を向けられ、顔のすれすれに弾を放たれたりといったことがある。他には真っ暗な部屋に何日も閉じ込められたりと、ありとあらゆる方法で私から一つの本能を消し去ろうとする。  正直そのような訓練には、拷問に近いものもあり、精神的におかしくなってしまう者も少なくない。組織にとって良い方に狂えば、組織的には美味しい話だが、「使えない」精神異常者はすぐに処分される。私たちの「仲間意識」は固く、基本的に仲間を殺すことは御法度であるが、組織に対して不利な場合は組織も容赦がない。それが『組織』と言うものだろうが、あまりにも惨すぎることは、生まれてずっと地下で生きてきた私でさえも分かる事だ。  仲間意識の強いこの組織は、逃亡者も決して許さない。「裏切り」という肩書き、組織の情報が外に漏れる可能性があるからだ。  だから、この組織を抜けたいなど漏らした日は、命日となるだろう。  そんなことは分かっていた。組織の人間なら、誰でも分かっている事だった。  だが私は、それを考えずにはいられなかった。  外の暖かさを知った日から、私はさらに外の世界の事を忘れられなくなっていた。    
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