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説明を受けても、信じられるはずがない。
ここは、ブレイク王国の王宮。ブレイク王国は今、魔王レッドブルにより脅威にさらされている。レッドブルが率いるモンスター軍団が、頻繁に国土に侵入して暴れている。
何度も討伐隊を組んだが、全て返り討ちに合ったそうだ。既に兵は半数まで減り、ブレイク王国が滅ぶのも時間の問題と危ぶまれている。頼みの綱は、国王軍最強の騎士、ウィーク。
そして、最後の切り札もある。先祖代々に言い伝えられたという秘策。
その秘策が、異世界から勇者の召還 だそうだ。
「そなたが、ソソッカらしいな。」
王冠に赤いマント、顎髭。いかにもといった姿をした、ブレイク王国4代目国王 フール が言う。
「はい、えっと。そそっか椎名 です。」
こんな時にも悪口で呼ばれるのかと、不満もある。しかし、この信じられない事態を飲み込むため、うなずいた。
国王フールは、僕をじろじろと見る。そして、横にいる男に聞く。
「魔導師スミス、本当にこの男で間違いがないのか? このなり、この身体。魔王レッドブルを倒せる力があるとは思えない。」
石が埋め込まれた木の杖を持つ胡散臭い服装の年寄りが、自信満々に答える
「この魔導師ケアレ スミス、断言いたします。この男こそ異世界の勇者、ソソッカで間違いありません。」
仮に、王と魔導師の言うことが本当で、ここが異世界の王国だとしても、僕が勇者ということはあり得ない。モンスターどころか、野犬にすら負ける自信がある。
もし、これがなんらかのドッキリだとしても、僕なんかをこんな壮大なドッキリに引っかけて得する人がいるはずもない。
そう、どちらにしても、これは人違いなのだ。
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