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僕は、勇者であるはずがないことを必死に説明した。剣も武道も出来ない。もちろん魔法も使えない。
彼女いない歴が年齢。あ、そういう意味では魔法使いではあるが。
僕の必死の説明を聞き、王は納得してくれた様子だ。ただ、相当お怒りで、魔導師ケアレ スミスを怒鳴り付ける。
「さっさとこの男を異世界に返し、本物の勇者ソソッカを召還しろー。」
謁見の間に、王の罵声が響き渡る中、慌てた様子の兵士が入ってきた。兵士は、王の前に膝をついて緊急の報告をする。
モンスターの討伐隊が、作戦失敗して帰還。先頭に立っていた騎士ウィークが重傷を負っているとのこと。
頼みの綱、王国最強騎士ウィークが倒れたとあっては一大事。まして、度重なるモンスター討伐の失敗による混乱で、王国内は治療する薬草すら足りていない。
「あの、薬なら僕の荷物に…。」
国王フールは、召還の失敗とウィークの負傷に、藁にもすがる思いだったのだろう。俺の薬に頼ることをすぐに決定した。
薬草や鉱石で作っているこの世界の薬に比べれば、僕の持ってきた家庭用の医薬品は圧倒的に優れている。
消毒液、解熱剤、鎮痛剤に抗生剤。絆創膏に包帯も取り揃えている。戦地の腐った食料や水で発生した腹痛に至るまで、数日で治した。
王は喜んでくれたのだが、新しい問題が生じた。ウィークが、敗北によりすっかり自信を失ってしまったのだ。
しかし、これは薬ではどうにもならない。大方の治療が終わり、魔導師ケアレ スミスの力で元の世界に帰ることになった。
残った薬のなかから、戦いの役に立ちそうな治療薬を国王に渡す。
「ソソッカ、人違いだったが世話になった。」
国王フール、騎士ウィーク、それに他の兵士に見送られて円陣に入る。見送りの中には、あのメイドドレスの金髪美人、シバー タリエもいる。
国王からのご褒美として、昨夜はシバーと夢のような一時を過ごした。ついに、魔法使いから卒業した。そのことについては、また別の機会に詳しく話そう。
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