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春。モモは七歳になった。
短い梅雨が過ぎて、雲の向こうに夏の気配を感じた朝、家に戻ると、聡がお母さんと一緒に朝ご飯を食べていた。
「会社、辞めようと思う」
お母さんは黙って耳を傾けている。
「なんだかおかしいって、ずっと思ってたのに、ゆっくり考える余裕がなくて決められなかった。でも……」
最近、よく眠れるみたいで、と聡が続ける。睡眠時間は変わらないはずなのに、目が覚めた時スッキリしている。
今朝起きて、冷静に今日の業務を考えて、まともにやって終わるはずがないのだと気が付いた。
「ブラックだったみたい」
「うん」
「辞めてもいい?」
「もちろんよ」
ずっと心配していた、とお母さんは言った。
「ちゃんと考える余裕があるうちに、自分で気がついてくれてよかった」
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