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その年の秋、高田さんが入院した。
廊下の段差に躓いて転び、右の足を骨折したのだ。八十八歳になる高田さんはもう歩けない。退院しても、一人で生活するのは難しくなった。
彼岸花が咲く土手の草むらで、ハナビが言った。
「お母さん、施設に行くの」
息子さんたちが集まって、難しい顔で話し合って、そう決めたのだと言った。
その日は猫集会だった。
夜の公園に、久しぶりにユキが姿を現した。すっかり痩せて歩くのも大儀そうだったけれど、ハナビを心配して出てきたのだ。
「大丈夫」
不安そうなハナビをユキは優しく励ました。
「魔法は魔法。ちゃんと叶う。安心して待っていたらいいよ」
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