プロローグⅡ

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プロローグⅡ

「もう歩けないよ~」 ミドリが弱音を吐き始めた。 「しっかりしてよ、もう」 さやかは後ろを振り返り、手を差し伸べる。 周りを壁に囲まれた《直轄中庭》の小高い丘の中腹。 丘がそのまま上の階の中庭につながっているようで、二人は小一時間ほど前からそこを登攀していた。 「あたしのほうが荷物多いんだからね」 さやかはぶつくさ言いながら、それでもミドリの手を引いてやる。 二人とも支給されたリュックを背負い、服はこれまた支給された戦闘制服を着、さやかは脇に『疑似ユグドラシル端末』の白い筒を抱えていた。 重量はそれほどでもないが、現在の丸太のような形態は小脇に抱えるにはややかさばった。 「もうダメ。ちょっと休もうよ~」 ミドリは手を引かれたまま、休む気まんまんで膝をついた。こうなるとテコでも動かない。 「…ったくしょうがないなぁ」 さやかは手を離し溜め息をつく。それから「じゃあポット出して」と言って、自身はリュックから簡易コンロを取り出した。「お茶っ葉は自分の出してよ」 丘の中腹で湯が沸く。 「もうちょっとだからガンバんな」さやかはミドリのカップに湯を注いでやる。 「あたしたち、もうどれくらい歩いてきた?」ミドリがお茶に息を吹きかけながら言う。 「まだ三日だよ」 さやかは自分のカップにも湯を注ぐ。 「三日か~」 ミドリはそっと芝生にカップを置くと、大袈裟に大の字になって寝転んだ。「もう三ヶ月くらい歩いてきた気分」 「バカ言わないで。免許皆伝してからまだ一ヶ月でしょ」 「あ、免許証忘れたかも」 「はあ!?」 さやかは思わずお茶をこぼしそうになる。「嘘でしょ!?」 「分かんない」そう言って自身のリュックを漁り始めるミドリ。 「え!? ちょっとマジで勘弁してよね。あたしヤだよ、また戻るの」 その時、ユグドラシル端末の警告音が鳴り響いた。 ビクッと身を固める二人。 二人の目の前に初めての《敵》が姿を現した。
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