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プロローグ 悪魔との出会い
日本の首都――東京。この世界では、ある悪魔の存在が囁かれていた。感情は形のないモノであるはずなのだが、なんでも、心を食べられてしまうとかなんとか。その悪魔は感情を宝玉に変えてしまうらしい。本当のところは分からないが。
一人の青年が、河川敷をふらふらと歩いている。十五歳ぐらいか。身長は一六〇センチほどと、男の中では小柄な方だ。黒髪はツーブロックで首の上の方で切られている。ごく普通の顔立ちをしているが、その表情は疲弊しきっている。着古した焦げ茶色のジャケットと、砂埃に塗れたジーパンを穿いている。ぼろぼろの茶色の合皮の靴を履いている。
彼に、帰るべき家も、守るべき家族もいない。今までずっと独りで生きてきた。誰も助けてくれなかった。
そんな背に激しい雨が打ちつける。
春なのに、これほどの雨が降るのは珍しいと思いながら、近くの橋の下に入る。
――雨が止むまで待つしかないな。
直登はそう思いながら、視線を走らせる。
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