第二章 契約を交わしてからの初仕事

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 見開かれた目はガラス玉のように見えた。  初めて人が死ぬところを見た直登だったが、自分でも不気味に思うほど、冷静だった。  ヴァノが鮮血を()ぎ落としてから、刀を鞘に仕舞う。  身体を反転させたヴァノは右頬に返り血がついている。  それを気にもせず、彼は左手を差し出した。 「鞄を」  直登は慌てて鞄を差し出すと、受け取ったヴァノは、それを床に置いて、蓋を開けた。  中に入っていたのは、分厚い古い本だった。  表紙と背表紙に文字が書かれているが、直登には理解できなかった。 「それは、なに?」  直登が尋ねた。 「これは、今まで集めた数多くの宝玉が収められている、魔導書だ。ネックレスほどではないが、エネルギーが宿っている」  ヴァノは言いながら先ほど手に入れた宝玉に視線を向けた。  娘を残して逝くのが哀しかったのか、白などないダークブルーだった。  魔導書の一番新しいページを開いて、宝玉の形に合わせて作られた枠に収めた。  魔導書を閉じて仕舞うと、それを直登に預けた。  二人は二階へ向かった。
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