第二章 契約を交わしてからの初仕事

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 直登が口を閉じ、ヴァノが進み出た。  黒い煙を確認したヴァノは、少女を見下ろした。 〝感情の支配者の名を以って命ずる。感情よ、我が手に宿れ〟  言いながら、少女の胸に右手を翳すと、黒い光が放たれ、宝玉が出てきた。  少女は感情を引き出された瞬間、涙が止まった。 「さて、最後の仕上げた」  ヴァノはジャケットの胸ポケットに宝玉を仕舞うと、刀を抜いた。 「ふっ――」  ヴァノは呟くと、少女の心臓を刺し貫いた。  直登はとても冷めた目で、人の命が散る瞬間を見つめていた。 「終わったぞ」  その声で現実に引き戻された直登は、鞄を差し出した。  ヴァノはそれを受け取り床に置くと、魔導書を開きながら、色を確認した。  悲しさが強かったのか、暗い水色をしていた。それを空いていた枠に嵌め込むと、魔導書を鞄に仕舞った。 「いくぞ」  右手で持ち上げると、ヴァノは直登に声をかけた。  二人は惨劇と化した家を去った。
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