19人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕はずっと、傷つけられる側だった。僕には生きる意味がない。苦しさや辛さしかなかったから」
「お前は人の闇を見てきた。光の中にいる人がどんな様子か、見てみるといい。お前はきっと、ひとつの選択肢しかない人生を送ってきたのだろう?」
直登はうなずいた。
「お前は光の中にいる人をどん底に堕とすこともできるし、闇の中にいる人間を突き放して、さらなる深みに堕とすこともできる。それはお前の意思次第だ。お前は俺が契約するに値する人間だ。お前は選ばれた。これからはお前が、いくつかある選択肢を、自由に選べるんだ。生きる意味は、そうだな……。お前は刀と楯を手に入れた。それを使い、光も闇も斬り裂く阿修羅となる。感情の怪物となるんだ。契約は今回限り。これから俺は、さまざまな人間から、感情を奪う」
直登の目が大きくなった。
「阿修羅、感情の怪物……なんだかカッコいい。……なれるかな?」
「なれるとも。俺がいるんだ。……さあ、いこう。俺達は闇の運び手だ」
ヴァノは不敵に笑い、左手を差し出した。
直登はその手を握った。
最初のコメントを投稿しよう!