19人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 悪魔の住処
雨も小降りになったころ、ヴァノに連れられて、ひとつの一軒家に辿り着いた。見た目は普通なのだが、直登は家があることが凄い、と思っていた。
鍵を開けてずかずかと入ろうとして、ヴァノは肩越しに振り返った。
「ドア、閉めろよ」
こくんとうなずいた直登は、入ってすぐドアを閉めた。
ヴァノはドアの鍵をかけると、そのまま、廊下を突っ切る。
キッチンが左側にあり、右側に風呂場とトイレがあるが、ヴァノは目も向けなかった。
直登は後についていくと、ヴァノが振り返った。
「ここがお前の部屋だ」
「僕の部屋? 外で寝なくてもいいの?」
直登の言葉に、ヴァノはうなずいた。
「ここになにがあるか、分かるか?」
少し優しい声で、ヴァノが尋ねた。
「テーブルと、椅子、ベッド。それからあっちには、冷蔵庫とキッチン。天井には豆電球。……見るのは、とても久し振り」
きょとんとしながらも、直登は答えた。
――家具が分かるということは、最初から外で暮らしていたのではない。
ヴァノは内心でそう判断した。
「人の生活って、こんな感じなの?」
「人に寄るが、大体はな。お前からすれば、特別に見えるかもしれないが。俺は二階にいる。なにかあったら、呼んでくれ」
「ふうん。……分かった」
直登は辺りをきょろきょろと見ながら、声を出した。
最初のコメントを投稿しよう!