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第二章 契約を交わしてからの初仕事
それから数日間、太陽の光が射していないときを狙って、ヴァノは一人でフードを被って、外に出た。その間、直登には留守番を頼んだ。
学校に向かっている一人の女子高生に視線を向けると、真紅の右目からは幸せだということを示す、花模様が立ち昇り、ダークブルーの左目には人の不幸を示す、黒い煙が少し立ち昇った。
ほかの人間にも目を向けたが、彼女と同じような者はいなかった。幸せか、不幸の二択しかなかった。
しばらく時間を空けて、帰宅途中と思われる少女を追跡すると、普通の一軒家に辿り着く。
ただいま~という声を聞いたヴァノは、普通の家庭かと思った。情報を得たので、家に戻った。
その日の夜、直登に声をかけた。
「初仕事が決まった」
「分かった」
直登がうなずいた。
「宝玉を取り出したら、殺す」
「今まではどうしていたの?」
「宝玉を奪った後、生かしていた」
「どうして殺すの?」
直登は首をかしげる。
「俺は数えきれないほどの人間から、本物の感情を奪ってきた。空っぽとなった奴を生かしておいても、惨いだけだと分かったんだ。せめて、一思いに終わらせてやることが、俺なりの、けじめだ」
ヴァノは低い声で言った。
「ふうん。人を殺したことはあるの?」
「昔な」
ヴァノはそう吐き捨てた。
「人を殺したとして、宝玉は壊れない?」
「感情の持ち主を殺したからと言って、それは壊れない。ただ、殺してから宝玉を取り出すことはできん。そこで、お前の出番だ」
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