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溶け切って甘くして
小春日和恋々。自嘲的な笑みをよく見せる彼女との思い出は、初冬の暖かさと乾きを感じるどこか寂し気な表情ばかりだった。
恋々と出会ったのは、まさしく私が「運命」で着飾った出会いを機に、だった。
直ぐに親しくなろうとしてしまう私に友達が音々くらいしかいないのと対照的に、世話を焼きすぎてしまう割に彼女は友人が多く、慕われていた。
その人望は、見てくれにも原因があろう。その背は私や音々よりも頭一つ分低い。腰までの長い茶髪をひらひらはためかせ、あっちゃこっちゃ駆け回る様は子犬みたいで可愛らしく、ぷっくりと柔らかそうな頬は笑うと赤く染まって女の子同士なのに私はどきっとした。
「私、こういう体質?でしょ。だからね、好きって気持ちが、煩わしかった。あの暖かさが肌を撫でる感覚が、たまらなく嫌だったの」
なのに、私、恋がしたいなんてね。
ある時恋々はそう私に告げた。
それが、彼女が人から好かれるもう一つの理由であり――。
彼女が恋の気持ちを捨ててしまった理由でもある。
まさかそれが落とし物として線の細いあの少年に拾われ、私たち四人が出会うきっかけの一つになろうとは、諦観めいた言葉の割に後悔の滲んでいた横顔の恋々には思いもよらなかっただろう。
恋々は十九歳で、私たちの中で一番年上の世話焼きさんだった。だから私は、人に好かれようとして演じていた「お姉さんキャラ」をやめることができた。
「聞いてくれる?私、分かってたの。私、最初から恋なんて出来ない人間なんだって」
ある日の彼女の表情は、秋霞の曖昧な色に染まって覚束なかった。
「だから、音々の音を拾った時、音々の歌が大好きなんだ、って透明な気持ちに触れても、それがどんな気持ちか分からなかった。音々に会って初めて、それが本当の恋だって気づいたの」
音々が落としたものを拾った恋々が、そのおかげで本当の恋を知る。
それはまるで、ロマンチックな運命だ。
そう思った私は、
「恋々は、どうしたいの?」
と、そう聞いて――。
ああ、それから。
彼女はなんと言っていたんだっけ。
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