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履修している講義が全て終わり、大学を後にする。
「あ~…疲れたぁぁ~……」
「今日は一日中あったしな。明日は急遽休講になったし、ゆっくり休もうぜ!」
「そうだな。じゃあ今日は夜更かしでもして昼まで寝てようかな~?」
「お、それいいな!俺もそうしようっと!」
そんな会話をしながら、友人と途中まで一緒に帰っていた。
「じゃあな、響生。気をつけて帰れよ。」
「おう、お前もな。」
そう言って友人と別れ、俺は自宅に向かう。
もう少しで自宅に着く時、急に携帯が鳴り出した。
「…ったく、誰だよ。」
ため息をついて電話を取り出す。
電話の相手を確認すると、「嶋田海斗」と表示されていた。
「…は?嶋田海斗?誰?」
このまま無視した方が良かったかもしれないが、間違い電話なのかもしれないという考えが頭に浮かぶ。俺は恐る恐る電話に出てみることにした。
「……もしもし?」
「あ、もしもし。佐久間響生さんの携帯で合ってます?」
聞いたことのある声が俺の本名を口にする。
「え、その声…カイリ!?」
「よく分かりましたね、そうですよ!」
知っている人物でよかったと、胸を撫で下ろす。
しかし安心するのも束の間、俺は一気に冷や汗をかいた。
俺は面倒事に巻き込まれるのが嫌で、マッチングアプリで自分の本名や電話番号を誰にも教えたことがない。プロフィール欄にも、個人情報を載せた覚えがない。もちろん、マッチングした人にも教えていない。
『なのにどうして、俺の本名と電話番号を彼は知っているのだろうか?』
その考えが脳裏に過ぎった直後、鈍い音と頭に鋭い痛みを覚えながら俺の視界は真っ暗になった。
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