一話 これを人は初恋と呼ぶのだろう

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*  上品な生成り色で沢山のフリルやレースに丁寧な薔薇の刺繍の入ったワンピース。  ふんわりとしたベージュの手編みのサマーニットのカーディガン。  丸い先がかわいい、コロンとした赤いオデコ靴。  髪の毛が二つに結んで、リボンを飾る。 「うん、完璧よ! ほのか」 「相変わらず似合いますね、お嬢様……」 「ほのかも似合ってるよ! 黒いワンピ! でもいつもそれじゃない?」 「私は日陰者であるべきのメイドなので」 「えー? そんなのもったいないってば! 可愛い服着ようよー」 「お断りします」 「むぅ……」  せっかくほのかは美少女なのに。童顔で小さいし、可愛い服も似合うのにな。  羨ましいルックスだと本当に思うのになー。はあ。ずるいよ、幼児体系……。  あたしだって幼児体系に産まれたかった……。  夏らしい丸いカゴバックを持ってあたしとほのかは車に乗り映画館まで送ってもらう。  映画館はそこそこ遠いし、あたしが独り歩きすると家族がうるさいしだいたいの場合が車移動だ。  ほのかだっているんだから、別に徒歩でも何も起きないっていうのにね。
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