30人が本棚に入れています
本棚に追加
大きな音を立ててお腹が鳴った。無理もない。昼を食べないまま既に日は傾いている。早めの夕飯でも食べに行こうかと思ったが、私の足は飲食物を提供しない場所へ向かっていた。
通りに面した鳥居からまっすぐ先に、もう本殿の姿が見える。大阪天満宮もそうだった。菅原道真を祀る神社は、皆同じなのだろうか。出店予定地の下見をしたあとに初めてここ――湯島天神を訪れたときには、まだ梅が咲いていた。あのときは影も形もなかった店が、紅葉の季節には完成した。月日が経つのは早いものだ。
五百円硬貨を入れて二礼二拍手。頻繁に訪れているからといってお賽銭の金額は下げない。むしろ、これだけ足繁く通っているのだから願いを叶えてほしいと思う。
本殿の近くには、お守りや御札を受ける授与所がある。湯島天神は学問の神として有名だが、病気平癒のお守りの評判が高い。桐箱に入って千五百円もするお守りなら、確かにご利益がありそうだ。
あの人の住所を知っていれば迷わず買うだろうが、残念ながらどこに住んでいるのかも知らない。私は授与所には立ち寄らず、湯島天神をあとにした。
最初のコメントを投稿しよう!