薄暮の街の魔法使い

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小さい頃、暗くなると街灯がつくのは魔法使いの仕業だと信じていた。 夕方、公園のベンチに座って、明かりが灯る瞬間に魔法使いが現れるのを見ようとしたこともある。 そんな気持ちは忘れてしまったと、思っていた。 今日は少し嫌なことがあって、なんだか家に帰りたくない。 暮れ始めた公園にひとり。 まだ街灯はつかない。 「…インセンディオ」 街灯に向かって戯れに指を振る。 小さい頃大好きだった魔法。 ぽっ、と明かりが灯る。 魔法みたいに。 偶然でいい。 わたしは今日だけ、魔法使い。
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