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疎外感
ご隠居さんに年度末で暇をいただけるよう、善次郎さんと一緒に願い出て、既に数日を経ていた。
ご隠居さんは何もかもお見通しだとでもいうように、何ら驚くことも無く、にこにこと頷きで返してくれた。
『『ひじり荘』のことは心配いらないよ。でもこれで縁を切ったなんて思わずに、このジジィにちゃあんと、会いに来るんだよ』
年が変わる頃には、娘さんご夫婦が移り住んで来るよう取り計らうつもりだと、ご隠居さんは私たちに告げた。
『娘婿の清治君はまだ会社勤めがあるから、こちらのことは構えないだろうが、娘と孫娘がいれば十分なことができるだろうからね』
孫娘の美幸(21)さんは既に嫁いでいるが、紗代(19)さんは、高等学校を出たはいいが、家で手持無沙汰にしているのだという。
『いつまでも親の脛をかじっているようでは困るだろうからねぇ』
「ユキちゃんが色々教えてあげると良いよ」などと言うから、てっきり管理人の仕事についてのことかと思えば違った。
『男を見る目だよ。僕も善次郎君なら安心して預けられる』
善次郎さんが太鼓判を押せる人だというのは事実だが、私は何も言えなくなって、ただ頬に朱を走らせるばかりだった。
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