疎外感

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 京橋さんらが引き揚げた途端に、今度は紗代さんが私に振り仰いだ。 「雪乃さん!チャンス到来です。その日は私も着物でめかし込みます!」 「着物は老け込むんじゃなかったんですか?」 私は少し恨みがまし気に紗代さんを見やった。 「まぁ……気にされてたんですね」 くっ……! 落ち込むので、そんな痛ましい目で見ないでもらいたい。 「貸して欲しいんですか?欲しくないんですか?」 冷たく目を眇めれば、紗代さんは神頼みのように拝んできた。 「勿論、貸してください!」 合わせた手から、私の顔色を窺うように覗き見る上目遣いは、甚く甘えたそれ。 なるほど……。 可愛らしい女とはこういう娘を言うのだろうと妙に納得してしまう。 「紗代さんに頼まれては意地悪はできませんしね」 「沢山お持ちなんですよね?選んでいいですか?」 どうぞと促せば、紗代さんは喜び勇んで階を駆け上がって行った。 「雪乃さんっ!早くっ!」 「くふふっ、そんなに慌てなくても着物は逃げやしませんよ」 まったく、現金な娘さんである。
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