疎外感

13/32

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
 紗代さんは少しバツが悪そうに目を逸らした。 「――です」 え? 「嫌い何て嘘です。ごめんなさい」 言うが早いか、紗代さんは頭を下げた。 くっ……! とんだツンデレさんだ。可愛らしすぎて手に余る。 「いいなぁ。雪乃さんは、素敵な恋をされているんですね」 紗代さんは口を尖らせた。   恋――あやふやで、不確か。何より信用ならない感情。 恋に対する私の見解はそれだ。 なのに不思議と、善次郎さんにだけはそれが当て嵌まらなかった。 何故なのか? 嗚呼、何となく時だと思い至った。 「雪乃さん?」 「あ、いえ……」 何でも無いと首を横に振る。 「紗代さんの言われる通りですね。大切にします」 胸に秘めるように手を添えた。 紗代さんは納得したように頷いたと思えば、すぐさま挑発するように目を煌めかせた。 「なら、失恋しない為にもしっかりめかし込みましょう。着物は大和撫子最大の武器なんですからね!」 「はい、そうですね。しっかりあやかりたいと思います」 紗代さんを見習って、私もめいいっぱいお洒落して、善次郎さんの前に立ちたくなった。  年末は、お目当ての人を落とし込むために出陣だと、私たちは華やいだ声を上げていた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加