Voice(声) 

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 モートはニッコリと微笑んでから、早歩きでその場から去って行った。   去った理由は、モートには感情というものがないからだ。人に感謝をされても何も感じないのだ。そんなモートがボギを助けた経緯は、昨日の大学からの帰り道で、偶然に道に迷って凍死寸前だったボギを見つけて、そのまま震えるボギを抱えて急いでパン屋へ向かったのだ。ただの街の人々やヘレンに教わった常識によるものだった。    道中、積雪や霜に幾度も転びそうになったが、聖パッセンジャーピジョン(絶滅した渡り鳥の意)大学へと向かう。    ここから西へ行くと、ウエストタウン、北はクリフタウン(崖)。東はイーストタウン。南はヒルズタウン(丘)という地名が人々から付けられていた。ヒルズタウンは高級住宅街やオートクチュール(高級洋品店)や、グランド・クレセント・ホテルという格調高いホテルなどがある。  モートの通う大学は、寝泊り場であるノブレス・オブリージュ美術館から北にあるので、ホワイト・シティの中央に位置するセントラル駅を素早く通り越して、クリフタウンへと足を向けた。  
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