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サティ:ここって考えたらやばい村だよね。誰も引っ越さない不思議。。。
千佳:笑
ボルシチ村。私達はこの村にそんな名前をつけた。ゆきだるま型の土地に黄色や茶色の家が並び、アバターやNPCの3頭身キャラクターがうろうろしている可愛い村だ。
しかし、村の実態を考えるともっと別の名前の方がふさわしいだろう。ここでは簡単に人がいなくなる。
私とサティが見守る中、檻は畑の前の道を進んでいき、やがてCGの終わりに至ったのか、透明な壁に飲み込まれるようにして消えていった。檻も、キャラクター達も、みんな。
千佳:この村の人って、どういう
その時、鐘が鳴った。私達の学校の近くにあるお寺のような深い音ではなく、もっと小さい鐘がコーンコーンとボルシチ村に響いた。
夜が来る。
サティ:何か言いかけた?
千佳:大丈夫
サティ:じゃ、おやすみガーリー塩見 😆
目の前が急速に暗くなっていった。猫耳の女の子がブンブンと手を振る光景を最後に、右上のメッセージエリア以外の全てが黒一色になる。
「本当、この村の人ってどういうメンタルしてるんだろ?」
私の言葉は文字にならずに、空気中に散った。
これは前々からの違和感だった。同じ村の人間として助け合い、笑い合った昼もたくさんあったはずなのに、それは100%嘘の世界だったのだろうか。村の仲間を簡単に追放したり、殺したり――まるで思い出なんて何一つないみたいで。
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