僕の瞳の先に

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 しかし足を元の位置へと戻した。誰かに手を握られたからだ。 「何で……?」  見たことのない制服を着た高校生くらいの女の子だ。ふわりとした長い髪に前髪をピンで留めた少女。パッチリとした目が印象的だ。一瞬、その可愛らしくもミステリアスな少女に目を奪われたが……。 「誰!?」  さっきまでここに誰もいなかったよね?? 瞬間移動!? 「何でこんなことしてんの!? というか早くこっち側に来なさい!!」  少女の怒声で僕はフェンスを跨ぎ彼女の方へ行った。それと同時に疑問も溢れ出る。 「やっぱ誰!? ここ立ち入り禁止だったはず……」  再び彼女の存在を聞く。すると少女も首を傾げている。 「私、何でここにいるんだろ?? というかあなた誰??」  いやいや……こっちの台詞だよ。質問したのもこっちだよッ!! ……まぁいいや。とりあえず、この場を去ろう。ビルの管理人とか誰か来たら面倒だし。 「どこに行くの!?」  その場から動いた僕の服を掴んだ少女が顔を覗き込んできた。 「ここに居ても仕方ないだろ……」  一世一代の大舞台を邪魔をされたように不貞腐れた僕は不機嫌そうに小さく呟いた。端から見れば『命を救った少女』でも、僕からすれば『地獄に引きずり戻した少女』だ。あまりいい気分はしない。  そのまま無言でビルを降りると、後から少女も付いてきていたのだった。
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