貮ノ書

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◇◇◇ 新井健二(あらいけんじ)は青ざめた表情で友達が消えた怪異事件の話を、出された紅茶にも手をつけず、包み隠さず全て目の前に座る柴間に話した。 「怪異事件が起きたのはいつだ?」 「二日前です」 「結構やばいな」 「え?」 驚く新井に、田路は丁寧に今起こっている状況を話す。 「飯沼君はにあったんです」 「神隠しに!? じゃあもう……」 柴間は淹れたてのコーヒーを飲みながら、神隠しの説明を無知の新井にする。 「いや、神隠しはあちらの世界に連れていかれる訳じゃない。ただ霊感の強い人間にしか見えなくなるだけだ。だから見つかる前に脱水症状、餓死で死ぬのがほとんどだ」 死ぬ。という言葉でさらに新井の顔は青ざめる。 きっとそれだけ飯沼孝介という友達が大切なんだ。と柴間は心の底で思っていた。 少し脅えながら、一枚の写真を机に置く新井。 その写真には踏切に立つ赤色のワンピースを着た女性が写っていた。 「うまく撮れた心霊写真だな。で?」 「この写真俺、一枚も撮ってないんですよ。俺が撮ったのはこの二枚だけなのに」 新井は自分が撮ったと言う、その二枚の写真も机に置いた。 先程の写真ほどではないが、それは心霊写真だった。 写真に写っていたのは無数の赤い色のオーブ。 「赤色のオーブって、柴間さん確か」 「ああ、今後不吉が起こるというのを忠告すると同時に怪異から君達へのだ。面白半分で肝試しをした事に怒ったんだろうな怪異は」 「そんな……って事は俺ら呪われてるんじゃ」 ガシガシと寝癖のついた髪をかくと柴間は面倒くさそうに言う。 「別にお前は呪われてねぇよ。ただ菅谷って奴は完全に怪異に憑かれてる」 「さっきから怪異って何なんですか?」 その質問を聞きながら柴間は、田路に車を用意するよう言った後に、新井の問に答えた。 「お前らで言う心霊、幽霊の事だ。科学では証明できない怪奇現象なんかを一括りに俺らはって言ってる」 柴間は昨日消費してしまった黒炎と白澪の召喚呪法を古びれた手帳に補充し、ハンガーに掛けていた黒いコートの内ポケットに入れた。 「陰陽師なんですか?」 「元陰陽師だ。今は家から追い出された怪異探偵」 そういうと柴間は新井を連れ、事務所前に田路が用意した車に向かった。 車に乗り込むと柴間はナビに宮道踏切の住所を入力し、田路に車を出すように言う。
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