參の書

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柴間は描きあがった絵をコピー機にかけ、五枚程度コピーした。 「これは怪異達にあげるものだ。お前らはスマホで写真を撮って探しにいけ」 「わかりました」 新井は返事をすると、スマホを持ち、そのまま事務所から出ていってしまった。 「じゃあ俺は」 両手をゴリゴリと鳴らし、酒呑童子は余裕そうに呪術を発動させる。 「(おれ)の元に集え炎鬼」 印を結べば酒呑童子の目の前に小さな炎の鬼が三体出現した。 見た目からして悪ガキそうな鬼は、宙に浮きながら酒呑童子の前に跪いた。 その光景を見て柴間は、ちゃんと鬼王なんだなっと思った。 「鬼王」 「我らが主、酒呑童子様」 「どうかしました?」 うざったらしいぐらい交互に、三体の鬼は酒呑童子に用件を聞いていた。 「この猫を探し出してくれ。我の酒の為に」 「酒呑童子様のお酒」 「ですか?!」 「任せてください!」 三体は火の玉になり、空いていた窓から外に出た。 「炎鬼にあの紙を渡さなくていいのか? 見るからにバカそうだがあいつら」 「炎鬼に紙を渡せば、すぐに燃えるだけだ。確かにあいつらはバカだが、行動力は凄いぜ」 ケラケラ笑う酒呑童子をスルーし、柴間はシワだらけの服から、アイロンがけが終わってる服に着替える。 そして、古びれた手帳から二枚の呪符を引きちぎり、式神を呼び出す準備をした。 「汝よ我を導き、我を守れ……犬神、黒炎! 白澪!」 呼び出された二匹は、目の前に立つ酒呑童子を見て驚いていた。 「まだ居たのか酒呑童子」 「あんな小さかった犬っころが立派になってな……まだジャーキー貰って喜んでんのか?」 「貴様……!」 「黒炎、やめな。それよりも新、また祓い?」 柴間は持っていた絵のコピーを二匹に見せると、今回の依頼内容を二匹に説明する。 最初こそは驚いていたが、二匹は納得したような表情を浮かべ、目の前の主を見た。 「なるほど……消えた助六という猫を探すのが今回の依頼か」 「それで、その猫の私物は持ってきたの?」 「あ、」 柴間と田路は顔を見合わせる。 新井から猫の私物を預かるのを忘れたと、今更気づいたのだ。 彼らの表情から察したのか、黒炎は大きな溜息を吐き、嫌味を垂れた。 「そういう抜けてるところがあるから怪我に繋がるんじゃ土の坊!」 「だからいつも言ってるだろ、俺は柴間だ」 「朝からうるせェ犬だな。これは今に始まった事じゃねぇだろ……あの元凶のガキにまた会えばいい話だ」 酒壺を片手に酒呑童子はつまんなそうにそう言った。 早く年代物の酒を飲みたい。そう言いたげな顔をしながら柴間を見ていた。 「ちゃんと今メールを送った。先にお前だけでも探しにいけ」 「いや…………それは遠慮させてもらうぜ」 何故遠慮をしたのか予想がつかないのか、田路は頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、酒呑童子を見た。
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