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スマホを奪った男は柴間の顔を見るなり、この前の請求書の事に対して、怒鳴り声を上げた。
「お前! 何、しっかり高校の窓ガラス代請求してるんだよ!」
「昼間からうるさい高校生だな…… 剣丞」
「あんたがちゃんと自分で払うなら、俺は怒鳴りませんよ」
高校の制服を着込んでいる剣丞は、源から奪い取ったスマホのトーク画面を一瞬だけど見ると、源に返した。
制服が暑かったのか、剣丞は上着を脱ぎながら柴間に向かって話を始める。
「あんたがここに来るのは珍しいな。どうしたんだ?」
「源から聞け」
柴間はもう一度説明するのがめんどくさく、説明を源に押し付ける。
説明を押し付けられた源は、何も言わずただ目を細め柴間を見ていた。
「あんたね、いつも面倒な事私に押し付けないでくれる」
「同じ事を二度も説明するのは時間の無駄だろ」
「はぁ……」
頭を抱えるように源はため息を吐くと、剣丞に対して昨日の事件のことを聞いた。
「俺は警察じゃないから分からねぇけど、確かにあれは怪異の仕業だ。けど、近くに住んでた和尚が何も感じなかったって言ってたからな」
「霊力が弱いんじゃないか? 和尚の」
「いや、俺もそう思ったが、相当な霊力の持ち主だった」
暇そうにする酒呑童子を横目に柴間は、昨日起こった怪異事件を推理し始める。
怪異は霊力、呪力が大きくなる程に知能も上がり、その両方の力をコントロールする事もできる。
だが、それでも完全に霊力、呪力を消すことは出来ない。微かな足跡が残ってしまう。
完全に霊力、呪力を消すことが出来るのは怪異ではなく、陰陽師の……それもある術だけだ。
「式神術か」
「まあ、そうなるわね。けれど式神術を使う陰陽師は全国探しても数は少ないわ」
源は柴間を疑うかのような眼差しを彼に向ける。
冷たく、悲しげな目線が訴えかけてくる。
「俺も最初にそう思ったが、現場から少し離れたところにコレが落ちていた」
スマホで撮った一枚の写真を剣丞は柴間達に見せる。
そこには一枚の真新しい呪符が写っていた。それも陰陽師界では知る人が少ない呪符が。
「この呪符って……五晴老の五人しか知らないっていう呪術の一種じゃない」
「五晴老……いつの時代も上の連中ってのは何を企んでるのか分からねぇな。陰陽師の中で唯一家系が続き、誇り高い御家様達がねー」
酒呑童子の言う通り、五晴老は平安時代から続く陰陽師の家系の当主達の名称であり、この五家が陰陽師界の柱で、誇りだ。
各地でちらばった陰陽師達を束ねる為のものでもある。
そんな彼らにだけが許された呪術は協力で、その血縁者のみにしか扱うことが出来ない。
「誇り高い陰陽師達が」
「けれどこれを残したってことは気づいて欲しいのか、これを残したところで私達を倒せる自信があるってことね」
柴間は少し気分が削がれ、剣丞からその画像を転送してもらうと同時に足早に警察署から立ち去った。
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