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柴間、田路が異変に気づく30分ほど前。
「昨日、佐山先輩に聞いたらやっぱり旧校舎の三階女子トイレだったんだって、首吊り」
「でもそれってすごい昔の話じゃん、昭和とか」
携帯を片手に、四人の女子高生達は旧校舎の幽霊話をしていた。
「本当に幽霊出たら嫌だよ私」
「バカねー出るわけないって。心霊番組とかほとんどヤラセだし」
怖がる一人の女の子を置いて三人は、古そうな旧校舎の中へと足を進めた。
旧校舎という響きからなのか、校舎は昼間でも薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。
その雰囲気に女の子達は冷や汗をかいていた。
「柚、置いてくよ」
「カビ臭いなー」
怖がりながらも一人置いてかれるのが怖かったのか、自分の名前を呼んだ女の子の元に駆け足で向かい、ピッタリと横を歩いていた。
「ほんと柚葉って怖がりだよねー」
「だって旧校舎ってだけで怖いのに、花子さんを呼び出すなんて……」
「だから出ないって」
ここが旧校舎だと忘れ、賑やかに喋りながら女の子達は三階の女子トイレへと歩みを進めていく。
昭和の頃に造られた旧校舎の廊下や階段は歩く事にギィという不気味な音を立てていく。
季節は夏だというのに肌寒いのか四人は腕を摩っていた。
それが怪異の仕業なのかは知る由もない。
「ついたー」
「旧校舎も不気味だけど、トイレの方がもっと不気味ね」
「トイレ和式だよ」
柚葉以外の三人は自殺のあったトイレに興味を示し、中を隅々と見ていた。
心配そうに柚葉はそんな三人を見守りながら、洗面台についている鏡に吸い込まれるように、柚葉は目線を移動させた。
一瞬、鏡の中に同じ歳ぐらいのおカッパの女の子が映ったのを柚葉は確認した。
あまりに一瞬の事で、自分の目を疑うように柚葉は目を擦った。
「今誰か……いた?」
恐る恐る柚葉はスマホのカメラを何が映った鏡に向け、シャッターをきった。
そこには確かにおカッパの女の子が映っていた。
柚葉達の着ている制服とは違い、昔のようなセイラー服を着た女の子が。
その少女の顔は青白く、首にはくっきりとロープが巻きついたような痕があった。
直感で柚葉はここは危険だと思ったのか、三人にこの事を伝えるために、勇気をだしてトイレの中へと入るが、既に遅かった。
三人は面白半分に花子さんを呼び出す為の方法を試していた。
「花子さんいらっしゃいますか? 花子さんいらっしゃいますか? 花子さんいらっしゃいますか?」
遅かった。柚葉はそう言いたげな顔でトイレの入口に立ちすくんでいた。
けれど、その言葉に返ってくる返事はなかった。
安心し、胸を撫で下ろすようにホッと息を吐き出すが、柚葉は『花子さん』をやろうと言い出した乃愛の言動に驚愕した。
「ネットで見たんだけど、昔よくやった、かごめかごめって降霊術? ってやつなんだって」
「あの、かごめかごめ?」
「面白そう!」
「そんなのやらないで帰ろ!」
柚葉の声など届いてないかのように三人は円を作るように手を繋ぎ、懐かしい『かごめかごめ』を歌い始めた。
「かごめかごめかごめかごめ。籠の中の鳥は、いついつ出会う。夜明けの晩に、鶴と亀が滑った。後ろの正面だぁれ」
その歌が終わると同時に地震のような振動が旧校舎を襲った。立っているのがやっとなのか、柚葉はトイレの壁に捕まり、恐る恐る三人を見た。
三人は平気な顔でそこに立っていた。そして、三人の円の中にはいるはずのない人影があった。
その人影は、写真で柚葉が見たあの人と似ていた。
「乃愛……みんな逃げて!!」
窓も開いていないのに、柚葉の髪が揺れる。
隣に人気を感じたのか柚葉は横をチラリと見ると、そこには同じ背丈の顔の青白い、女子生徒が立っていた。
「後ろの正面だーあーれ? …………私と遊びましょ高橋柚葉ちゃん」
その女子生徒は不気味な笑みを浮かべていた。
そんな出来事に柚葉は恐怖し、意識を手放した。
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