參の書

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炎鬼達の足元にいる猫は新井の探している猫とは全くの別人いや、別猫。 色も違えば、柄も違う。全て何もかも違う子猫をこの三人は連れてきたのだ。 「お前ら……期待を裏切らない馬鹿さだな本当。誰一人覚えてないのか? (おれ)が探してるのは白と黒の猫だ」 少し笑いながら酒呑童子は炎鬼達の目線に合わせるように屈み、助六の絵を見せた。 三人は絵と子猫を交互に見て、どこが違うのかを確認していた。 「ほんとだ」 「酒呑童子様の言う通り」 「この猫違います!」 驚く三人に対して小さく溜息を吐く酒呑童子。 柴間はそんな酒呑童子の顔を見るのは初めてだった。 「いいか、ちゃんと覚えてまた探してこい」 「いい考え思いつきました!」 「この絵を持っていけば」 「今度は間違えません!!」 「おい……」 炎鬼達は交互に言葉を言うと、酒呑童子飲もっていた絵を三人で手に持ち、この場から去ろうとしていた。 しかし、絵は瞬く間に炎に包まれてしまった。 炎に包まれる絵を見ながら三人は大声を出し驚いた。 「あっ! 絵が!!」 「酒呑童子様……」 「燃えてますよぉ!!」 コントのようなやり取りを見ていた新井は腹を抱えて笑っていた。 逆に酒呑童子は頭を抱え、また溜息をついた。 「お前らは炎の鬼、燃えやすいモノに触れれば燃えるのは当たり前だ。だから三人で違う特徴を記憶して探せって言ってんだよ我は」 まるで子供を優しく注意する親のように酒呑童子は、三人の鬼達にどうすればいいかを教えていた。 「分かりました! 僕は黒を」 「ぼ、僕は……白!」 「俺は猫だ!!」 そう言うとまたどこかへと消えてしまった。 まるで嵐が去ったかのような空気になる。 「酒呑童子もちゃんと子守りはできるんじゃな。似合ってなかったが」 「うざ」 白澪が炎鬼達に連れてこられた子供 猫に六助の事を説明し、どこかで見ていないか? 。と聞いていた。 子猫はニャーニャーと鳴きながら、白澪に何かを説明していた。 白澪は少し驚きながらも、子猫から聞いた情報を俺らに話し始めた。 「この子猫、六助を見たらしいわ。この街で高いタワーで」 見てないだろうと勝手な思い込みをしていた柴間は、誰よりも驚いた表情をした。 そんな彼なんかには見る気もせず、田路達は白澪にさらに情報を聞くようにお願いをしていた。 「どうやら鉄塔みたいね、この子猫が言いたい場所は。けどどの鉄塔か分からないらしいわ」 「鉄塔って言っても……この街には鉄塔は多く立ってるしな」 「森の近くらしいわ」 それだけのヒントでは一本に絞り込むのには難しかった。 子猫が言っている森の近くにある鉄塔というのはこの街では三箇所存在していた。 まず一本目この公園の裏手に聳え立つ鉄塔。そして二本目街の東に位置する林の真ん中。三本目は、まさに新井の実家のある方の空き地にある。 スマホの時計を見れば、針は一時を指していた。 焦る気持ちの中、柴間のスマホが着信音を鳴らし、震え始めた。 こんな時にと思いながら彼は電話に出る。
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