190人が本棚に入れています
本棚に追加
電話に出ると聞き慣れた女の声が聞こえてきた。
「今聞き込み終えて、最後に猫が目撃された鉄塔に来てるんだけど、猫の姿はないのよ」
源の最後の言葉に違和感を抱きながら柴間は、答える。
「そうか。一度合流をしたいからその場所を教えてくれ」
「あなた話聞いてた? 猫の姿はないって言ったのよ私は」
その源の言葉を聞くなり、やっと柴間は先程の違和感の正体がわかった。
源は猫だけの姿がないという意味で言っていたようで、それが示すものは猫以外のもの。
猫以外のものと言っても挙げればキリがないが、人間やそこにいても違和感のないものは除外の対象。
逆に除外されないものとなると、それは一つしかない。怪異だ。
「そうか……で、何がお前の前にはいるんだ」
「聞いて驚かないでね。あなたの探していた猫、怪異になってるのよ」
最も辿り着きたくなかった答えだった。
結局はどこかで怪我をして身動きが取れていない。柴間はそう思っていたが、現実とは残酷だ。
柴間は一度耳元からスマホを離し、隣に立つ黒炎に意思共有を使い、直接脳内で話を振った。
「黒炎、俺を乗せて走れるか?」
「俺を誰だと思ってるんじゃ。当たり前だ」
「なら、新井の家の近くの鉄塔に向かって欲しい」
そう黒炎に意思共有で伝え終わると、柴間は黒炎のフサフサとした背中に跨った。
どこかへ向かおうとする柴間に気づき、田路は彼にどこへ向かうのかを問い詰める。
「急用ができた」
「まだ依頼中ですよ柴間さん」
「悪いが刑事さんに呼ばれたんでな」
まだ何かを言いたい田路は、もごもごと口を動かすが、声が小さく柴間の耳には届かなかった。
「僕らも行きます」
「…………もう昼だ。今日は特別に俺が奢るからご飯でも食べてこい」
自分の財布から一万円を出し、柴間は納得していない田路へと渡した。
田路はまだ納得がいっていないような表現をしながらしっかりと、柴間の一万円を受け取った。
「田路、新井を頼むな」
そう言い残し柴間は源達がいる鉄塔へと黒炎達を連れ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!