壹ノ書

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二匹の式神と共に田路の元へと向かうと、気を失っていた四人の女子生徒が目を覚まして、田路に質問攻めしていた。 童顔な顔で性格のいい田路は女性からは、気に入られやすい。 怪異の事になると怖い事、痛い事が嫌いな田路は戦闘員ではなく、サポート員として現場に結界などを張る事をしている。 「あ、柴間さーん、お疲れ様です。黒炎様、白澪様もお疲れ様です」 「うむ。全く疲れる仕事じゃったの」 「クロはお利口な祓いはあまり好きじゃないからね。私は好きよ新の祓い」 黒炎は白澪のそんな言葉に、溜息を吐きながら言葉を返していく。 「お主はお優しいからの」 見えないであろう黒炎と白澪の場所を、一人の女子生徒がじっと二匹のいる場所を見ていた。 「柚葉、どうしたの? まさかあの柴間さんのこと……」 「え? 違うよ。見えないの? 大きな黒と白の犬がいるんだけどあそこに二匹」 柚葉と呼ばれた女子生徒は黒炎と白澪のいる場所を指さしていた。 「え、犬? いないよそんなの」 その会話が聞こえ、柴間はその女子生徒の元へと他の女子生徒をかき分け、向かった。 彼は女子生徒を見下すように問いかけた。 「お前、コイツらが見えるのか?」 両脇に着いてくる黒炎と白澪を撫でながら柴間は言った。 二匹は満更でもない表情をしていた。 「え? 見えますけど……まさか幽霊」 落ち着いているのか、驚いているのか分からない表情を浮かべながら、女子生徒は二匹を見ていた。 「幽霊とは違うな。コイツらは犬神、俺の古くからの式神で、普通の人の目では認識はできない。おおかた、お前はさっきの出来事で霊感が覚醒したんだろうな」 「幽霊が見えるってことですか?」 「怪異はそんなに強力じゃなかったから、一時的だろうな。二、三日で見えなくなる」 柴間がそう言えば柚葉はほっと安堵の表情を浮かべていた。 「それより、良かったですね。今回の破損費窓ガラス二枚ですよだいたい」 「別に旧校舎が壊れたところで俺は金出さねぇからな」 式神二匹にポケットに入れていた犬用ビーフジャーキーを四枚ずつ与え、帰した。 (なんだかんだ言って犬だよな、あいつら…。対価も安く済むしな) 新校舎の方から先程の女子教師が走ってきた。 「高橋さん! 木村さん、大隅さん、前田さん。良かった無事で」 「栗山先生!!」 「柴間さん、田路さん。ありがとうございます!! 大切な教え子達を救ってくださり」 深々とお礼の意味を込め、お辞儀をする栗山先生に柴間は頭を上げるようにお願いし、あるメモを渡した。 「きっと、これから来るであろう怪異事件担当刑事の源雪子(みなもとゆきこ)かその助手の犬塚剣丞(いぬずかけんすけ)に渡してくれ。そっから金は出るから」 「え……」 「学園長に振込は早めにと伝えておいてくれ」 手をヒラヒラとすると彼らは学校から出て行った。
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