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美紀1
トーストを一枚、熱いブラックコーヒーにリンゴの入ったヨーグルトを一つ。それを二セット。
目を覚ました夫が、非常にのんびりとした動きで顔を洗い、歯磨きをして、とやっている間に食卓に朝食を並べ終えた美紀は、小さくため息を漏らした。
お互い朝はしっかりと食べる方ではないため、準備に手間がかかるわけではない。とはいえ三年間、毎朝続けているこの作業に、美紀はうんざりしたものを感じ始めていた。
夫には「あなたは仕事に行くんだから」、「自分の分も用意するのだから」と口にしてはいるが、この程度の事は自分でやってほしいという気持ちが湧く時もあるし、自分一人ならば朝食は抜いてしまっているはずだ。
子供さえいれば。美紀は思う。結婚当初の人生プランはすっかり崩れてしまっていた。一年もあれば落ち着くと聞かされていた夫の仕事は、年を追うごとに忙しくなるばかり。少なくとも、もう一年以上は枕を交わしていない。
また、その仕事に関しても、疑いが芽生えている。直接働いてるのを目にしているわけではない。この時勢にそこまでの長時間労働を強要されるだろうか。取引先との酒席というのは、それほど頻繁に催されるものなのだろうか。疑惑の種は至るところに埋まっている。
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