愁次と朝宮さん

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「な、何故俺なんですか?」 愁次は恐る恐る訊ねた。 こんな根暗のどこがいいんだ? 自分のどこがいいのか、全く分からない。 だが、そんな疑問を覆すように朝宮は顔を上げて小さく微笑んだ。 「若郷さん、いつもお友達や先輩方が困った時に率先して助けていますよね。私、その姿を見て好きになったんです。」 「すっ!?好き!?」 愁次は酷く驚いた。 今まで女性から好きと言われたことがない為、とても慣れるような言葉ではなかった。 「だから、どうしても近づきたくてあのような行動を…本当にすみませんでした。」 朝宮は再び頭を下げた。 彼女の突然の謝罪と告白。 愁次の頭は追いつけなかったが、分かったことが1つあった。 それは、自分のさり気ない行動を誰かが見ていることだ。 朝宮は、そんな目立たない自分の良い所を気づいてちゃんと見ていてくれた。 それだけでも、とても嬉しかったのだ。 「朝宮さん、顔を上げて。もう大丈夫ですから。」 愁次は、頭を下げる朝宮に顔を上げるよう促す。 顔を上げた彼女の黒い瞳は、愁次の柔らかい笑みが映し出された。 「そ、それで…さっきの告白の返事なんですけどー」 静かな会議室の中、二人の穏やかな時間はまだ始まったばかり。 若郷愁次、彼は朝宮結子の恋心という落し物を拾ったのであった。 ー完ー
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