愁次と朝宮さん

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2日後の午後14時。 愁次は、取引先に電話をし終え一息ついていた。 「ふぅ…とりあえずスムーズに話せたから良しとするか。」 普段、長時間電話をする事はなかった為少々疲れが滲み出ている。 口に甘いものを含めたい気分だ。 「1階のコンビニでキャラメル買ってこよう。」 愁次は席を立ち、部署の出口に向かった。 辺りを見回すと、他の社員達は取引先に電話をしたり資料の作成の打ち合わせなどをしている。 これはいつもの光景だ。 オフィスを見回していると、視界の端にたまたま池垣の姿が映った。 「池垣、これ今日中に完成させてくれ。」 「ええっ!?今日中に終わらせる気がない量ですよね!?」 課長に分厚い量の資料を渡され、彼は嘆いている。 自分でもあの量は渡されたことはないのに、池垣は何をしたのやら。 「お前、休憩室のテーブルの上にあったマドレーヌ食べただろ?」 「マドレーヌ?…ああ、あの可愛く包装されたお菓子ですか。受付の方からの差し入れだと思って食べました。」 「あれ、俺の彼女が作ったやつ。」 「えっ…。」 池垣の顔色はサーッと蒼ざめ始める。 これは恨まれても仕方がないことだな。 愁次は、池垣に背を向けコンビニへと足を向けた。 「あっ。」 すると、向かい側から歩いてくる人物に目を止める。 片手に資料を携えて電話をしている朝宮の姿だった。 「はい、それでしたら先日お送りした資料を見てもらえればと…ええ、その資料になります。えっと…デザインのページは次の17ページですね。」 彼女は、電話越しでもいつもの笑顔を浮かべて客に対応をしている。 その姿は、本当に仕事ができる人間の鏡だと愁次は思った。 自分も負けてられないな。 朝宮の姿を見て、気持ちを奮い立たせる。 そう思っているうちに、早足で歩いてくる彼女とすれ違った。 次の瞬間、愁次の足元に何かが落ちる音が耳に入る。 「ん?」 音がした方を見下ろすと、彼の足元には人形のような物が落ちていた。 愁次は落とし物を拾い、手のひらに乗っているものを見る。 床に落ちていたのは、青色のウサギの可愛らしいキーホルダーだった。
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